サンタクロース村からこの後乗る列車までの時間調整を兼ねて街を見渡せる丘に立ち寄る。オーロラが見えたら・・・ということもあって高台に登ったがやはり時間つぶし程度の短時間では見えなかった。
ロヴァニエミ駅は構内こそ広いが州都の駅にしては駅舎が小さく、ホームには跨線橋も屋根もない。もちろん他のヨーロッパの駅同様、改札もないのでバスから降りて直接ホームに行く。そして列車までまだ時間があるので駅舎からホームに出たすぐのところに参加者のスーツケースをまとめて置いた。そして荷物を置いたまま各自思い思いの時間を過ごす。小窪さん曰く、こんなもの誰も盗っていかないだろうとのこと。そういえば成田空港で「貴重品には気をつけた方がいいが、北欧は総じて治安がいい」とか「水道水は飲んでもいい」と言っていた。嫁さん曰く、海外ツアーに参加して治安と水が安全なんて言われたのは初めてとのこと。
かくいう私は鉄道マニアの血が騒ぎ出しあちこち見て回る。ホームには主な列車の編成表と時刻表があった。構内放送も頻繁に行われているし日本以外の鉄道というイメージからすれば意外と親切。もっとも、掲示物は何となく意味がわかったものの放送は何を言っているかさっぱりわからなかったが。
編成表によれば私たちの乗るP68列車、ヘルシンキ行き(ここにはサンタクロースエキスプレスの名前は出てこない)は座席車2両、食堂車1両、何かよくわからない車両(後に荷物車ということが判明)1両、寝台車10両、自動車運搬車2両の16両編成からなり号車番号は31から始まっている。「レストラン オーロラ」でツアー参加者の乗車号車と席番が伝えられ、ほとんどの人が39号車だが、私たち夫婦と一人で参加した女性、小窪さんが43号車と聞いた。まさか40両も50両もつなげているはずはないと思ったがこれで判明。どうやら列車ごとに号車番号を分けているらしい。また自動車運搬車というのは事前情報によれば日本にも昔あったカートレインと同じもので、車(マイカー)と人間を同時に運ぶ(もちろん人間は客車に乗り換えるが)ための車両らしい。
しばらくして小窪さんからチケットと主要列車の時刻表が配られる。それによるとP68列車はロヴァニエミ始発ではなく、83kmほど東のケミヤルヴィ始発らしい。実はこれも事前にフィンランド鉄道(VR)のHP(英語版)から情報を得ていてサンタクロースエキスプレスは日に何本か出ているが日程的にこのケミヤルヴィ始発の列車になるのではと思っていた。それからすると列車はもうホームに入ってもよさそうなものだが、どうも40分ほど遅れているらしい。フィンランド鉄道はヨーロッパの鉄道にしては時間に正確と聞いていたが、この時期フィンランドにはスキー休みという一種のウインターホリディがあって(地域によって時期が若干違うらしいが)そのため臨時列車も運行されているのでその影響が出ているのではとのこと。
40分遅れとなるとなおさら落ち着かなくなり嫁さんを放っておいてあっちうろうろこっちうろうろ。そのうち乗車ホームである3番ホームになにやら停まっていて車内の明かりもついているのが見えた。行ってみると最後部の車両には「39」の文字が。これでだんだん話が見えてきた。ネットでの時刻表ではP68列車はここで長い停車時間があったが、ここで車両を増結するのである。しかもケミヤルヴィからの編成に自動車運搬車が連結されているので一度それをはずしてここから増結する編成を連結、改めて自動車運搬車を連結し直すため時間がかかるのである。すなわち私たちの乗る43号車は増結された編成である。
私はこの列車がP68列車と確信していた。しかしホームでの番線表示が曖昧だったので小窪さんは確信が持てないようであったが一応3番ホームに行ってみる。3番ホームといっても跨線橋がなく、日本のようにホームが高くないので地元の人はホームをそのまま下りて線路を渡ってホームへ。私たちはスーツケースがあったためホームの端がスロープになっている側から線路を渡る。そして小窪さんの確認を待って列車に乗り込む。乗り込むと言ってもホームが低くて車両が高いのでスーツケースを載せるのが一苦労。私が先に乗り込み、私と嫁さん、そして一人で参加した女性の3人分のスーツケースを先に列車に乗せる。北欧諸国は福祉が充実していると聞いたが全然バリアフリーじゃない。でも冷静になって考えるともしかしたらこちらの人はこういうケースは助け合うのが普通なのかもしれない。
寝台車は全て3人用の個室。従って私たちの席番は22、23だが部屋には24番まで書いてある。但し相部屋はないようで私たちの部屋も私たちだけだし、一人で参加していた人も一人一部屋だったよう。
私は日本でもいろいろ個室寝台に乗ってきたが、部屋に入っての第一印象は「聞いていたより狭い」だった。しかしそれは見た目だけの話。二人分のスーツケースを部屋の中に入れても二人で座るスペースは十分にあるし(部屋の中に簡易式のいすもあるがさすがにこの荷物ではそれは使えなかった)、第一ベッドが幅、高さとも十分スペースがある。2人で使用なので2段ベッド状態(3人の時は3段ベッドに変えられる)だが下段に私が座ってもあまり圧迫感はない。ちなみに私の身長は177cm。幅も手で計ってみたら約90cm。日本のB寝台車は70cmだからかなり広いし、ベッドの上でスーツケースを開けて整理もできる。また、荷棚も通路側、窓側各1ヶ所あるのでそれらを有効に使えば見た目以上に広く使える。通路側はともかく、窓側にも荷棚があるというのは日本にはない構造。
また噂どおり2等寝台ながら設備は充実していた。洗面台(使わない時はふたを閉めるとテーブルになる)及び鏡(鏡を開けると紙コップとミネラルウォーター、液体のハンドソープが入っている)、ハンガーやハンドタオルもある。但し寝間着の類はない。部屋のドアはカードキーでロック出来るようになっている。カードキーはプラスチック製でパンチ穴があいているタイプのもの。フィンランド鉄道は線路の幅が広軌と呼ばれる広い幅を使用。日本の場合、新幹線や一部の私鉄が標準軌と呼ばれる幅で1435mm。JR在来線が狭軌と呼ばれる幅で1067mmだがそれらより広い(後に調べたところ1520mmらしい)幅を使っており車両自体が少し大きいのでこれだけのことができるのだろう。ただ、上段に上がるためのはしごはやや使い勝手が悪い。使わない時は壁に引っかけてあるので問題ないが、使うためにはドアの前に引っかけないといけないので、ドアを開閉する必要がある時ははしごが使えないのである (設備の写真はこちら)。
それにやっぱりこの列車もフィンランドデザインというか地味な色彩と鮮やかな色彩がうまく調和して不思議なそれでいて落ち着く雰囲気がある。外観は青と白を使ったクラッシックな感じ(事実、車両自体も決して新しくはなさそうだが汚くはない)、車内(通路部)は茶色やベージュで暖かみがあり、部屋やトイレは部分部分に明るい赤色を使って近代的な顔も見せる。
列車は結局定刻より20分遅れで音もなく発車。発車時の振動がないのはヨーロッパ流のバッファ付き連結器のなせる技か。車内放送もないが、日本でも夜行列車の深夜の時間帯は案内放送を中止することが多いので、あまり違和感はなかった。
ヨーロッパ流と言えば改札も同じ。発車してそれほど時間がたたないうちに車掌が改札に回る。そして部屋の照明を全て消して二人で外を眺める。もしかしたらオーロラが見えるのではという期待感からだったが列車が粉雪を巻き上げるので天気がいい割には視界はあまりクリアではなかった。それでも再び森の中を走っていうことはわかる。結局最初の停車駅、ケミに着いた23時過ぎまで起きていたが見ることはできなかったので寝台車に慣れてる私は上段、嫁さんは下に分かれて寝る(同じ号車の女性はわずかながら見えたそうである)。
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