2004年2月29日(日)

表紙の写真:トゥルク城の中庭にて

行程:ロヴァニエミ駅(前夜21:20発)〜(P68列車:サンタクロースエキスプレス)
    〜ヘルシンキ中央駅(8:40着、市内ホテルにて朝食)〜(貸切バス)
    〜トゥルク(昼食、市内観光)〜(貸切バス)〜ナーンタリ(ナーンタリ・スパ・ホテル泊)

26.夜汽車に乗って(後編)
27.ヘルシンキの朝
28.うれしはずかし天使の輪
29.歴史の時間
30.五つ星のホテル

26.夜汽車に乗って(後編)

荷物車

食堂車

座席車

寝台車
 心地よい揺れのおかげで爆睡していた(らしい)私であったが嫁さんに起こされる。慣れない夜行列車のためか嫁さんは早く目が覚めたらしい。しかし、しばらくはベッドの上でごろごろする。そして7:30頃に車内の視察を兼ねて食堂車に行く。食堂車や他の車両のことは気になっていたが、私たちの車両からずいぶん歩かなくてはならなかったし、あまりうろうろするのも気が引けたので私は控えていた。しかし食堂車は嫁さんの方が乗り気だったので行ってみることにした。
 前述の通り、荷物車の前が食堂車。荷物車の中は自由に行き来が可能。昔は日本の夜行列車にも荷物車を連結している列車が多かったが、今はほとんどない。それにこの列車のように編成の真ん中に連結しているケースはなく、日本でいろいろな列車に乗ってきた私でも荷物車の中に入ったのは、当時の国鉄の車庫見学で中を見せてもらった時だけ。
 ヘルシンキに着いたら朝食になるので食堂車では特に食事をせずにコーヒーだけ注文する。レジで注文するのだが出てきたのはやや大きめの紙コップに入ったコーヒー。一杯1.7ユーロだったが、日本で言う消費税が非常に高くて総じて物価が高めのフィンランドにしてはこういうところにしては意外と安い。車内は簡単なパーティーションで2室に分かれている。レジに近い側は止まり木的な高いいすとテーブルのあるビュフェタイプ、パーティーションの向こうはレストランタイプ。しかしビュフェタイプは日本のように窓の外に向かって座るのではなく、枕木方向にテーブルが配置されていてゆったりしている。レストランタイプも日本の列車と違い木製のソファとテーブルでレストランと言うよりサロンのような雰囲気。食堂車自体が日本では貴重になっているが、食堂車にソファを持ってくる発想は日本にはなく残っている一部の夜行列車の食堂車も豪華さを追うばかりでなく派手さはなくともこういうおしゃれな内装にするのもいいと思うが。
 私たちはコーヒー一杯のことなのでビュフェタイプに座ったが、食堂車の持つ旅のムードは十分味わえる。うまく言葉にできないが月並みな言葉で言うなら長距離列車特有の旅情ということになるのだろう。食堂車ではそれが特に感じられる。
 せっかくだからと食堂車の前に連結されている座席車を偵察する。座席はリクライニングも効くしゆったりしていて座り心地が良さそうだった。ただ、ヨーロッパの列車にありがちという集団見合い式(車両の中央を境にお互い向き合うような座席配置)というのはちょっとなじめない。この旅行の前に成田入りした時の成田エクスプレスがそうだったが理屈の上ではボックスシートと同じとはいえちょっと抵抗がある。ちなみに座席車にはガラス張りの個室もある。座席の個室はヨーロッパの列車ではよく聞く話、というか私の場合、ヨーロッパの列車をイメージする時にまず思い浮かべるのがこれ。やはりここはヨーロッパだと感じる。
 最後の停車駅Pasilaに着いたのは8:32。今までずっと田舎の風景がったがここまで来るとトラム(路面電車)が走っているのが見えたりして都会になってくる。何となく似た雰囲気の駅をどこかで見たようなと思ったら、JR長崎本線、長崎の一つ手前浦上が雰囲気的には似た感じ。そして8:40定刻にヘルシンキ中央駅に到着。

室内の設備


左上:ハンガーと備え付けのタオル
右上:ミネラルウォーター。テーブルをあけると洗面台があります。
左下:洗面台上の鏡をあけるとこの通り。袋状の物はハンドソープ。
右下:カードキーとキーを入れるホルダー

  (妻の独り言) 寝台列車の旅はことのほか快適で、よく眠れました。一度夜中目が覚めや
           や閉所恐怖症気味の自分は大声を出して騒ぎましたがすぐに状況を飲み 
           込め落ち着く事ができました。
           何でも経験してみるものですね、海外での寝台列車の旅なかなか良い思い
           出になりました。




ヘルシンキ中央駅にて

27.ヘルシンキの朝
 ひとしきり写真を撮った後、すでに待機していた貸切バスにスーツケースだけ預けて駅前のホテルで朝食とする。今までどこも天気はよかったのだが、ここヘルシンキはどんよりとした曇り空だった。ある意味曇り空の方が北国の冬空らしい。
 朝食といってもホテルの朝食だから今までどおりバイキング形式。特別目新しいものはなかったが、ソーセージやベーコン、またそれにつけるケチャップやマスタードは置いてあった。ただ、マスタードもやっぱりあまり辛くない、というより甘め。
 集合時間まで時間があったのでヘルシンキ中央駅を見に行く。列車で着いた時には似たような構造の上野駅の地上ホームに似ていると感じたが、駅舎の中は保存が取りざたされていたJRの奈良駅をスケールアップした感じだった。特に天井の高さはそっくり。奈良駅は古い洋風建築故保存問題が持ち上がったが、あまりなんでも保存というのは好きになれなかった。しかしその本家本元ともいえるヨーロッパの駅を見ていると、そういう問題が出てくるのもわかる気がした。
 この駅を見に来て残念だったのはロシアのサンクトペテルブルグ行き列車の時刻がわからなかったこと。別に将来的にも乗る予定がある訳でもないが、国際列車の時刻表というのはどんな感じか見てみたかった。ただ、その後わかったのだがサンクトペテルブルグのことをフィンランド語でピエタリ(Pietari)というらしいのでもしかしたら見落としたかもしれない。

サンタクロースエクスプレス


ヘルシンキ中央駅とトラム

  (妻の独り言) 海外で駅をゆっくり眺めた事がなかったので、他の都市との比較はできな 
           いのですがヘルシンキの駅はフランス映画に出てくるような、歴史を感じさ 
           せる重厚な建築でした。装飾はいたってシンプル、何処かの国のようにポス
           ターペタペタなんてありえません。
           天井の高い薄暗い建物をぼんやり眺めていると、ロングコートに目深に帽 
           子をかぶった紳士が現れそうなそんなドラマチックな駅でした。



28.うれしはずかし天使の輪

ヘルシンキから乗ったツアーバス

前菜+パン

メインディッシュ

デザート 黄色いのがほおずき
 ヘルシンキからまた2時間ほどのバスの旅だが、トイレ休憩が一度あるだけ。ラップランドよりは田舎でも家は多いし森も木の間隔が詰まっている。日本人にはこちらの風景の方が馴染みやすいかもしれない。ただ違うのは岩盤のところが多いこと。道路脇の岩盤に溶けた雪が氷の壁になっている様は高い山ではともかく平地では日本では見られない。フィンランドは岩盤の上に国ができたようなもの。
 12時にフィンランドの古都トゥルクに着く。昼食は「エンジェル・ハウス」というレストラン。中に入ると星をあしらった金色の輪を頭に乗せた男性がお出迎え、次いで全員が席に着くと天使の格好をした女性が登場。ちょっとお年を召された天使ではあったが。このお二人はこのレストランのオーナー夫婦。そして奥さんの話によれば(もちろん小窪さんに通訳してもらってだが)元々はアートギャラリーだったのを、天使をモチーフにしたレストランに改装したとのこと。しかしギャラリーを完全にやめたのではなく、5つある部屋はさらに個々にテーマがあってそれに合わせて装飾されているほか、画家に開放して絵を描いてもらっているとのこと。いすの背もたれにも絵が描かれてあるがそれも全て描いてもらったものだという。私と小窪さんの椅子にはまだ何も描かれていなかったが。またそんな訳で各部屋に掛かっている絵や置物には値札が付けてあり、気に入ったら売ってもらえるらしい。
 料理の方は、前菜がサラダ(+パン)、メインがサーモンのソテー・野生のマッシュルームソースがけ、デザートはチョコレートケーキ・食用ほおずき添え、コーヒー(または紅茶)だった。サラダといっても生野菜にオリーブオイルがかかっているだけでドレッシングの類はやっぱりない。塩気のものといえば黒オリーブぐらい。サーモンは相当に厚切りでおいしかった。日本で食べるサーモンは塩気が強いイメージがあるからそんなにたくさん食べられない。それに何よりソースのマッシュルームが「野生」と聞いただけでおいしく感じてしまう。デザートもケーキはそれはそれでまあまあだったが、食用ほおずきが酸っぱいけどおいしかった。食用のほおずきがあるのは聞いたことがあったが実際に食べるのは初めて。ヨーロッパではポピュラーらしい。



 食事をしていると奥さんが、ご主人が頭に乗せていた金色の輪と同じものを一人一人に乗せて回った。最初は恥ずかしくて年甲斐もなくこんな格好をとも思ったが、新婚旅行だしこういうのもありかなと思ったら幸せ気分。私たちがツアー客というのがあったからかもしれないが、ご主人直々にコーヒーを注いでくれたり、奥さんがいろいろ話をしてくれたりとアットホームというかもてなそうというご夫婦の気持ちが伝わってきたのが幸せな気持ちにさせたのかもしれない。そのせいかいつもならこんな天使の輪なんてと思うところだがこれは捨てる気になれず家に持って帰ってきた。何にせよいい時間を過ごさせてもらったと思う。

  (妻の独り言) 芸術家の卵達に才能を発揮させてくれる場所を提供しているだけあって、 
           どの絵どの家具を見てもエネルギーに満ちあふれていました。トイレの中に
           も沢山の絵や版画かな?があってしばらく佇んで眺めていたいそんな所でし
           た。



29.歴史の時間
 「エンジェル・ハウス」より現地日本人ガイドの中村さん(男性)が合流して市内観光。トゥルクはフィンランドの首都だった時代があり、日本で言えばまさに京都みたいなところ。名所も多いがまずはトゥルク城へ。
 ヨーロッパのお城といえばフランスやドイツの城のような塔のある城を思い浮かべるが、トゥルク城は砦のように無骨で地味。中村さんによれば事実、元々は砦としての意味合いが強かったらしいが長いスウェーデン統治の中で王が変わるごとに様式が変わり、いろいろな要素を持った城になったらしい。
 この城を隅から隅まで回ろうとすれば半日かかるとのことでごく一部の見学、しかもかなり駆け足で回る。それでみんなの後を着いて歩くのが大変。嫁さんはじっくり中を見たいのかのんびりしているし(私もゆっくり見たいのはやまやまだったが)、かといってここで取り残されてしまうとどこに行っていいかわからないほど通路が入り組んでいて迷子になりそうでやきもきしていた。結婚式が終わった夜に名古屋駅近くの居酒屋で簡単な二次会をやったが、そのお店が迷路のような構造になっていたのを思い出した。
 次に訪れたのがトゥルク大聖堂。元々カトリックの教会だったのが宗教改革の頃にルーテル派(プロテスタント)に改宗した教会なのでプロテスタントの教会にはない特徴(例えば全部ではないが屋根に絵が描かれているなど)が残っている。そのせいかステンドグラスも派手さはないし大きな教会の割には地味な感じ。私はクリスチャンではないがこういう雰囲気は好きだし、高校時代の数少ない得意科目が世界史、しかも宗教改革の頃の西洋史が好きだったので圧倒されるような荘厳な雰囲気に包まれながら中村さんの話に耳を傾ける。ここには大きな教会らしく何千音も出せる大きなパイプオルガンがあり、その音色を一度聞いてみたいと思うが、聞いたら跪かずにはおれなくなるかもしれない。
 それにしてもこの中村さんの頭の中は歴史事典が詰まっているんじゃないかと思うぐらい次から次、よどみなく説明が続く。ガイドだからよく勉強している程度の記憶力ではない。私が勉強したのは大昔のことでいくら得意科目だったとはいえあらかた忘れていたことばかり。改めて勉強になった。

トゥルク城





トゥルク大聖堂

  (妻の独り言) プロのガイドとはこの人の事。
           今まで色んな所に出掛けましたが、こんなに素晴らしいガイドさんは初めて 
           でした。
           わかりやすい話の内容、声の大きさ高さ、彼の根底にはこの土地への愛情
           がたっぷりあるんだろうな・・と感じました。笑いや受けを狙うガイドとは違い
           品のある上品な時間でした。



30.五つ星のホテル
 トゥルクからバスで走ること20分、ナーンタリという街のはずれにあるナーンタリ・スパ・ホテルに着く。日本語が話せるというヤルノさんという若いホテルスタッフとともに会議室に入り、宿泊者カードの記入と館内の説明がある。宿泊者カードの記入はサーリセルカのホテルではなかったが、フィンランドのホテルではあるのが普通とのこと。そして実際にヤルノさんと一緒に館内を見て回る。このホテルはいわゆる五つ星のホテルだが、外観を見た時には意外と小さいと思った。しかし小さいと思ったのは建物が低いせいで、実際には横長の建物なので一度案内してもらっただけではよく把握出来ないほど広く、レストランだけでも3つ(カフェを入れると4つ)、そこにサウナ、プール、ビューティーセンター、フィットネスセンターもある。さらに客船を改造したサンボーンヨットホテルが通路でつながっていてそこにもレストランがある。但し、日曜日と月曜日はレストランが休み。ホテルのレストランに休みがあるというのは日曜日はほとんどのお店が休みになるフィンランドらしい。
 このヤルノさん、まだ若そうだが本当に日本語が上手い。他の参加者が聞いたところによれば奥さんが日本人だとか。しかし知り合ったのは2年前でその時は英語で会話したという。簡単な漢字やひらがなは書けるしわずか2年でここまで上手くなれるものだろうか。それも日本に住んでいるならともかくこちらにいてである。
 夕食は3つあるレストランの一つパビリヨンキレストランで参加者全員での食事なので時間まで部屋でのんびりする。部屋はやはり木を多く取り入れていることとベランダに出られることを除けば日本のホテルのツインルームに近い構造。テレビも台の上に乗っている。ただシャワーはサーリセルカトゥントゥリホテルとほぼ同じ構造。違うのはシャワーブースが一段低くなっているので水がトイレの床に流れ込まないことぐらい。
 夕食のメニューはサラダ、サーモン、デザートでそのデザートもチョコレートケーキと昼間とほとんど同じ。特にサーモンとチョコレートケーキはまたかという感じ。こちらの人はチョコレートというか甘いものが本当に好きである。ただ甘いものの割りには意外と後にひかない。
 このレストランでは生バンドによる演奏で社交ダンスが行われていた。もちろん私たちはできもしなしする気もないのだが、嫁さんはダンスしている人の年齢層が高いということをしきりに言っていた。まあ、今日は日曜日だしこんな時期にダンスをするのは現役をリタイヤした人がほとんどだろう。

   (妻の独り言) 海外に出掛けて思うのは年齢を重ねた人たちが素敵に色んな場所に現 
            れていること、何処かの国ではトレンドな場所には若いカップルばかり目 
            立ちますが、海外に出掛けるとどんなところでも年配のご夫婦が手をつな
            いで現れる。それが全く違和感がない。そこだけがゆっくりと時間が流れ 
            今まで過ごしてきた人生を味わうかのようなダンスにしばし見とれてしまい
            ました。